12.28.2015

東スロバキアのクリスマスディナー


スロバキアはこの冬、ほとんど雪がふりません。毎朝カーテンをあけると、窓の外には霧におおわれた風景がひろがっています。スキー場は閑古鳥が鳴いてます。
霧というと、わたしは短編アニメの『霧につつまれたハリネズミ』とギリシャ映画『霧の中の風景』を思い出します。2編とも、私の映画ベスト10に入る大好きな作品です。

©Yuri B. Norstein

今年のクリスマスは、東スロバキアにある夫の実家で、義父母といっしょにお祝いしました。夫の田舎は、ウクライナとの国境近くにあり、わたしたちが住んでいる街から車で片道約7時間かかります。同じ国内に住んでいるのになかなか会いに行くことができません。
義父母は2人暮らし。夫は4人きょうだいですが、みんな家族を持って別の街に住んでいます。毎年クリスマスになると、義父母は、近くの村に住むそれぞれの母親(高年齢の一人暮らし)を招いて、4人でイヴを過ごしていました。しかし、今年になって二人が次々と老衰で亡くなり、さびしいクリスマスになってしまうと、わたしたちがいっしょに過ごすことにしたのです。
プラハの大学で勉強中の夫の姪っ子も、おなじ思いからか、わたしたちより一日早く、義父母のもとへやってきていました。

6人で過ごすことになったクリスマス。
24日は午前中からいっしょにイヴのディナーの準備をしました。


わたしは、キノコのスープに準備をします。
この秋、義父母がキノコ狩りで採ってきた自家製干しキノコを水につけてふやかし、小さく刻みます。10年以上前に、わたしがはじめて夫の実家のクリスマスに招待された時、義父が前の晩から水につけていたキノコをしぼり、ナイフで細かく細かく刻んでいたことを思い出し、わたしもできるだけ細かく刻みました。
キノコをふやかした水と酢キャベツの汁がスープのだしになります。いためたみじん切りの玉ねぎと刻んだキノコと酢キャベツを煮込み、最後にサワークリームと塩を加え、とろみをつけてできあがりです。写真を撮りわすれてしまったので、できあがりをお見せできませんが、うす茶色のクリームスープという感じ。
下の写真は、義父が自家製酢キャベツを瓶から取り出しているところです。



わたしがスープを作っている間に、義母は孫たちとBobáľkyを作ります。


Bobáľkyとは、パン種を小さく丸めて焼いたものです。
おばあちゃんと生イーストをいれたパン種をこねるわたしの娘です。


スロバキアの家庭では、生地をこねたり切ったりする木の板とのし棒が日用品としてに使われています。義母は、この上で、卵めんやピロシキの皮も作ります。



発酵した生地を板の上でのばして、切って丸めて、天板の上に並べ、二次発酵をさせてから卵液をぬってオーブンで焼きます。


焼きあがったBobáľkyです。これに、砂糖と塩で味付けしたバターミルクをかけ(バターはあらかじめ別に溶かし、すこし焦がした風味をつけておきます。)下味をつけてから、4種類の味つけのBobáľkyを作ります。
4種類の味とは、挽いたクルミ(甘)、挽いたケシの実(甘)、カッテージチーズ(甘塩)、いためた酢キャベツ(塩から酸っぱい)。


夕方6時、教会の鐘の音が聞こえるころには、みんなで食卓を囲み、お祈りをしてから、イヴのディナーをいただきます。
この日は、義父が食前酒に、甘いシェリー酒をだしてくれました。

最初にいただくのが、写真のOplátkyです。小麦粉を水で溶いてうすくパリパリに焼いたものです。これにハチミツとうすく切ったニンニクをのせ、健康を祈って食べます。
スロバキアに来たばかりのころクリスマスに招待され、はじめてこの組み合わせを出された時は、正直びっくりしました。ハチミツと生ニンニク! ハチミツの甘さの中からニンニクの辛さが舌を刺激し、パリパリとした軽い歯ごたえ。ふしぎな食べ物です。

次にキノコのクリームスープ。(写真なくてごめんなさい。)

そして、Bobáľky。


左上から時計回りに、酢キャベツ、けしの実、クルミ、カッテージチーズ、です。
夫の田舎では、伝統的なクリスマスディナーのメインディッシュは、この4種類のBobáľkyです。おかわりはたくさんできますが、質素でしょう?

(チェコ)スロバキアのキリスト教信者は、イヴのディナーに肉を食べてはいけません。しかし、「魚は肉ではない」という独特の解釈から、イヴのディナーのテーブルには、魚肉料理が出されます。内陸の国なので、淡水魚、とくに鯉のフライが多いです。最近は、輸入食材もいろいろ入っているので、海の魚もある程度選べるようになっていますが、スロバキア人の好きなのはサーモンです。サーモンのお寿司は、こちらの人にも人気があります。
このクリスマスに魚肉を食べる風習も、東スロバキアの田舎の伝統にはありません。若い世代は、伝統に縛られてはいませんが。

このBobáľky、クルミ味を食べると来年一年間健康でいられます。つぶつぶのけしの実味は、お金持ちになれる・・・・のだそうです。
他の2つにどういう意味があるのか、何度も教えてほしいと頼んだのですが、教えてもらえませんでした。何だろう・・・・・・意味深な何かがあるのかな・・?



12.22.2015

クリスマスまであと数日


クリスマス準備熱という伝染病があるとしたら、現在スロバキアは隔離されてもしかたのない重症状態。熱にうかされた多くの人々が必死の形相で、ショッピングセンターをさまよっています。
そして、あれよあれよという間に、もうあと数日でクリスマスではありませんか。わたしは、ブラチスラヴァの青空市場にあるものを買いにいきました。
すると・・・・・な・な・なに?!この行列は・・・・。


なんだか、イヤな予感。
列がひろがらないように、野菜カゴで通路を確保したり、なんだか本格的・・・。
まさか・・・と思いつつ、列の先頭へと歩いていくと・・・・はぁ~・・・やっぱりそうでしたか。



すっぱいキャベツの漬物を買う人々の行列でした。
スロバキア語でキスラーカプスタ(Kyslá kapusta)。ドイツのザワークラフトです。
たるに入った酢キャベツが、数キロ単位でどんどん売れていきます。

このキスラーカプスタはスロバキアのクリスマスイヴのディナーにはかかせない食材です。イヴに肉を食べないスロバキア人は、聖なる晩のディナーに、これと干しキノコを煮込んだスープをいただきます。地方によって味付けにバリエーションがあるそうですが、夫の田舎では、伝統的にサワークリームを使います。大きなペットボトルに入っているのは、すっぱい漬物の汁です。スープにはこの汁も使います。お好みにあわせて汁の量を調節し、スープのすっぱさを加減します。


近くでは、干しキノコも売っていました。
秋にキノコ狩りをして自家製の干しキノコを作る人も多いですが、こうやって、イケメン3人が並んで売っていると、ついつい買いたくなります。・・・・わたしは夫同伴だったので、写真だけ。


これは、むきクルミの山。1kgで8ユーロ(1000円強)です。クルミもクリスマスのお菓子にはかかせません。クルミを挽いた粉をクッキーに入れたり、砂糖と卵の白身をまぜて焼き菓子のあんにします。


ブラチスラヴァ周辺では、もみのきだけではなく、ヤドリギの枝も飾りつけに使われます。夫の田舎の東スロヴァキアでは、この伝統はありません。
写真を撮っていたら、売り子のおじさんに、この上から吊り下げた力作を撮れと言われ・・・・・ポーズをとったおじさんといっしょに、カシャッ!


で、わたしが市場に買いにきたものとは・・・・はい、そうです、キスラーカプスタです。
でも、行列の長さにあきらめました。あきらめて、義母に泣きつくことにしました。
今年のクリスマスは、十何年ぶりに夫の実家で義父母といっしょに過ごします。義母の自家製酢キャベツと干しキノコのスープもひさしぶりなので、楽しみです。

どうぞみなさまも、おだやかなクリスマスをお迎えください。
Veselé Vianoce !


追伸:
おかげさまで「子ども脱被ばく裁判」応援カレンダーの売り上げが好調です。大阪の「空色画房」で開かれている原画展で18日に行われたイベントも大成功だったそうです。みなさま、どうもありがとうございます。原画展は12月26日が最終日になります。