12.31.2016

12月31日


もう2016年もおしまいなのに、わたしは、思うように進まない絵本のラフ作りをしています。
えんぴつで描いては、消しゴムで消し、描いては消し・・・・・・・・・・・・。

今年は、クリスマスになにもしませんでした。
いつもだったら、クリスマスツリーを立てて、飾りつけして、夫や娘のためにプレゼントを用意したり、クリスマスディナーを作ったりするのだけど、今年はなにもしませんでした。

24日のイヴは、町中が霧につつまれていて、我が家の窓から見えるクルミの木が聖なる日にふさわしく見えました。静かな静かなクリスマスです。




年末のPinpoint Galleryでの「こけし展」は、おかげさまで、こけしちゃんは二人とも嫁ぎ先が決まりました。観に行ってくださった方、どうもありがとうございます。


今回、はじめて「こけし展」に参加して、自分でも可笑しくなってしまったことがひとつ。
自分でも自分がこんな気持ちになるなんて思いもしなかったのですが、作品がこけし(人形)ということで・・・それも二体だったからか、箱に入れて送り出したのに、私の頭の中では、二体は「飛行機に乗って二人旅」のイメージがどんどんふくらみ、日本に着いてからのかれらが気になって仕方ありませんでした。
以下は、私のフェイスブックに書いた投稿のテキスト。

こけしちゃんの二人旅。無事、目的地のPinpoint Galleryに到着しました。途中、空港の出国手続きでは、コートを脱げだのほっかむりを取れだのあれこれ言われ係員をてこずらせたそうです。空港内では買い物にあけくれ(お嬢さまが香水を欲しがった・・)搭乗時間に間に合わず、アナウンスされてしまったとか。二人で必死に走ったそうです。入国審査はわりとすんなり・・・・だけど、このふたり、パスポート忘れて行ったんですよね。違法滞在??

二人のイメージは、郵便屋さんと手紙を待つお嬢さんでした。お嬢さんは、ほのかな恋心を郵便屋さんにいだいていたようですが、どうやらこの恋ははかなく終わり、二人は別々の場所へと旅立つことになったようです。しばらくは、お互い後ろ尻尾を引かれる気持ちで、夜空を見上げるでしょうが、新しい生活の中、きっと別の出会いを見つけることでしょう。日本の黒髪のこけしさんと恋に落ちるかもしれません。

あぁ・・・・こんな妄想を楽しんでいるから、なかなか新しいラフが進まないのですよね。
がんばらないと~。

今日のクルミの木はこんなです。ここ数日あたたかく雪はすっかり溶けてしまいました。



ご近所さんの煙突。薪ストーブの煙が見えます。

なんだか、ちっとも大晦日らしくないブログで情けないですが、新しい年もどうぞよろしくお願いいたします。










12.11.2016

クリスマスマーケット2016


スロヴァキア在住の友だちに頼んで、親子でクリスマスマーケットを楽しんでいる姿の写真を撮らせてもらいました。ここは、ブラチスラヴァの中央広場です。
女の子は、つい先日4歳になったばかりのKちゃんです。Kちゃん、Mさん、モデルをどうぞよろしく!


わたしの娘はもう17歳です。もう何年か前に、わたしの背丈を追いこしました。
今回、写真を撮っていて、あらためて、4歳の子ってこんなに小さいんだって思いました。お母さんに抱っこしてもらわないと、お店で売っているものが見えないよ。


そうか、そうか・・・・・・うちの子もこんな時があったんだよなぁ・・・・・・しみじみ。


背中のリュックには、どこにでも連れていくお気に入りのうさちゃんが入っています。
このうさちゃんは、もともとKちゃんのお兄ちゃんのお気に入りだったそうです。

うちの子も保育園に通っていたころ、白い犬のぬいぐるみがお気に入りで、「わんわん」と名付け、どこに行くときも抱えて連れていってたなぁ・・・・・・・・・・・・しみじみ。


これは、焼き栗屋さん。Kちゃんの真剣なまなざし・・・。


ほら、こんなふうに、紙袋にいれて渡してくれます。
紙をとおして、アツアツの焼き栗の熱が手に伝わってきます。
お母さんが皮をむいてくれた焼き栗を、Kちゃんは大事そうに味わってました。

焼き栗を食べて、さぁ、おうちに帰ろうか。
Kちゃん、Mさん、おつかれさま。どうもありがとうございました。
お父さんとお兄ちゃんが待つ家に帰る車の中で、Kちゃんは「ジングルベル~、鈴がなる~」と唄ってました。

クリスマスマーケットのおまけ画像:
アイシングでデコレーションされた蜂蜜入りクッキー(Medovníky)です。


ピカチュー、なんだかこわい・・・・。

12.02.2016

こけし展

まぁ、なんと長いこと、ブログアップをほったらかしにしていたのでしょう・・・・ごめんなさい。
アップの仕方の記憶も危ういですが、久々のアップです。


「こけし WONDER DOLL 展」に出品します。
12月12日(月)~24日(土)、南青山のPinpoint Gallery で開かれます。
http://www.pinpointgallery.com/cn9/cn106/cn109/pg1613.html


こけし展への参加ははじめてです。
こけしに絵を描いたのもはじめて。
そうそうたる作家さんたちの作品といっしょに並べてもらうって、やはり相当なプレッシャー。
どんなこけしにしょうかなーと考えて、やっぱりキツネにしました。


鼻は、木片を彫刻刀でけずって、貼り付けました。
このキツネは、「手紙待つお嬢さん」です。

そして、もう一体は、そうです、「郵便屋さん」です。



帽子についているのは、ヨーロッパの国々でよく見かけるラッパの郵便局マークです。

お嬢さんは、郵便屋さんの運んでくる手紙をまっているのかしら? それとも、手紙を運んでくる郵便屋さん自身を待っているのかしら・・・・・?
クリスマスのプレゼントに、この意味深なキツネこけしはいかがでしょう。

12月1日(月)からはじまる「こけし WONDER DOLL」展、どうぞ覗いてみてくださいね。




6.03.2016

おとなしくリハビリと制作の日々。


4月1日にアキレス腱を切ってから、2か月がすぎました。
前回の投稿に、お見舞いのメールが届き、とても励まされました。ほんとうにどうもありがとうございます。
ギブスが取れた5月は、1週間のリハビリ合宿にも参加して、今は杖なしで歩けるくらい回復しています。でも、まだできないことがあります。階段をおりること。つま先立ち。階段の上り下りって、みんな当たり前にやっている行為だけれど、上がるのと下りるのって、足の動きがまったくちがうって、今回、はっきりと自覚しました。

悪いことは重なるもので・・・・・情けないことに、ここ数年自分の体に対し無頓着にすごしてきたツケが出てきて・・・・・・この数か月は、おとなしく健康回復に集中しています。
年末に出版予定だった絵本の仕事を、一年先にのばしてもらいました(泣)。K編集者さん、ほんとうにごめんなさい・・・・・。

そんなわけで、家ではリハビリや家事の合間に、個展のための絵を制作しています。


これは制作途中の一枚。

小さな板にアクリルグワッシュや油えのぐで、キツネやオオカミの絵を描いています。
個展では、絵本の原画プラス絵本とは一味ちがった「降矢奈々のキツネ&オオカミ」をお見せしたいなと思っています。
板絵は一番小さいサイズが、タテ19㎝、ヨコ10.5㎝。これが一番多くなりますが、この2,3倍のものも制作中。できあがった絵は、こんなふうにアトリエに壁に並べてます。


正直に言うと、アクリルえのぐはちょっと苦手です。
乾きが速く、イメージがはっきりしている時や、潔く完成できる人には、とても良い画材だと思うのですが、わたしは、潔くない。まだ乾き切っていないえのぐをこねくりまわしたり、削り取ったり、重ね塗りしたり・・・・・・・そういうことがしたくなります。そういう駄々っ子のような行為に対してアクリルえのぐは、冷ややかです。(というように、わたしには感じる・・・・・)



そんな中、友人の画家、堀川理万子さんがすすめてくれた、アクアオイルカラーのDUOが活躍してくれてます。油えのぐなのに水でも溶ける。アクリルえのぐを使いながら、徐々に油えのぐへとシフト・・・。


あぁ、いいなぁ~このこねこね感。

個展のお知らせはまた改めて告知しますね。
しばらくは、おとなしく・・・・・・・すごします。

5.01.2016

5月1日です。

今日は5月1日。メーデー。
アトリエの窓から見える空は、ぼんやり薄曇りです。

ブログ更新をずいぶん長いことお休みしてしまった。ごめんなさい。
そのあいだにいろいろなことがありました。
熊本の大震災の時は、3,11の不安な気持ちがざわざわと蘇ってきました。まだ余震が続いているそうですが、被災地の方々が一日も早く安心な生活に復帰できることをお祈りしています。

季節は、冬の終わりから花盛りの初春を迎え、今は青葉まっさかりです。
実は、4月1日のエープリールフールに、バトミントン中アキレスけんを切りました。只今ギブス生活真っ最中です。はれた足やギブスの足、松葉づえなど写真にとって、ブログにアップしようと思いましたが・・・・・・まったく美しくないので、やめておきます。
松葉づえをついて歩くのは、高校生の時以来です。あの頃は、若さいっぱいだったからかなぁ・・・。不自由だったはずの日常生活もあまり記憶になく、お風呂の大変さだけが忘れられないくらいです。
でも、年齢もそれなりに上がった今回は、少々凹んでいます。今週金曜日から10日間、リハビリ合宿に行きます。10日間・・・・・・仕事できないのが、かなりきびしい・・・・。


今日はメーデー。
「鬼ヶ島通信」の夏の号にまたマンガを投稿しました。
ラフの一部はこんな感じ。


画像はいちばん最初のラフなので、本描きではかなり修正しましたが、前回とは違う雰囲気のマンガになりました。

「鬼ヶ島通信」50+17 夏の号は、6月下旬の刊行予定です。


追伸:意見広告に灰色オオカミを描きました。
    掲載された週刊朝日5月6日13日合併号。おとなりは、なんとキヨシローさん!
   


2.20.2016

新刊のお知らせとメイキング画像。

長いこと更新をおろそかにしてしまいました。
ひさしぶりに、こんにちは。

今回は、2月20日発売の新刊のお知らせです。


「おれたち、ともだち!」シリーズの13冊目、『いつだって ともだち』(内田麟太郎・作/偕成社刊)です。前回の『よろしく ともだち』が出たのが、2012年5月でした。あれから、もう4年近くの年月が過ぎてしまったなんて、ボー然としてしまいます。
が、何はともあれ、めでたく13冊目が出版されました。

お近くの本屋さんで、手に取って見ていただけたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いいたします。

そして、今回のブログでは、シリーズ新刊刊行を記念して、本になるまでのメイキング画像の一部・・・ボツになったスケッチを公開しちゃいます。

まず、表紙&裏表紙。


表紙にアンティークの木造一輪車を使いたくて、こんなラフを描きましたが、『あいつもともだち』に似ているので描きなおし。(ちなみに、この土木用一輪車のことを「ねこ車」って呼ぶって、知ってますか?)

ウラ表紙は、『ともだちくるかな』のキツネさんに対抗させようと、描きなおし。
以下のようになりました。


次は、お話中ほどの大事な場面。
星空の下、キツネが穴の中にひとりぼっちというシーン。
一枚の画面の中に、星空のうつくしさも、穴の大きさも、そして孤独に怒っているキツネの気持ちも描きたいという、よくばったシーンです。

最初は、こんなでした。


なんか、イマイチですよね。
で、試行錯誤・・・・・・・


星空の大きさを広げてみたり、キツネの大きさを変えてみたり・・・・・うーん、しっくりこないなぁ・・・・。
その時、あるアイデアが閃いて・・・・・・・描きなおしてみました。


キツネを背中側から描くことにしたのです。
表情を描かないことで、かえってキツネの気持ちが、伝わってきたように思えませんか。
また、キツネの怒った顔が描かれていたときは、どうしてもそこへ目が引きよせられてしまい、星空に目が向きませんでした。キツネの形が抽象的になって、星空が迫ってくるようになりました。
うまくいきそう・・・。

こんなふうに、読者のみなさんに絵本が手渡される間に、いろいろな試行錯誤があります。
わたしは絵描きだから、今回、絵を作る上でのメイキングを公開しましたが、お話を作られる内田麟太郎さんは、文章を完成させるまでに、きっと、たくさんの七転八倒を(ひそやかに)繰り返していらっしゃることと思います。

これらのラフが絵本の中でどんな絵になっているか、どうぞ見てくださいね。



ここ数か月は、一度に3つの絵本のラフ作りに取り組んでいて、頭の中が、キノコとベーコンの入ったスクランブルエッグ状態です。
その一部をちょこっとだけお見せします。




いろいろでしょ?

ほとんどラフが完成しているもの。まだまだ手を加えらければならないもの・・・・などなど。
ラフから絵の具による本描きがはじまり、いつか絵本が完成することを、待っていてください。







1.19.2016

戦後71年。


ご報告おそくなりましたが、年のはじめに「鬼ヶ島通信・」が届きました。
わたしが初マンガを寄稿した、50+16号です。
今号の表紙は、みやこしあきこさんの西洋風なオニです。雄ヤギのようなりっぱな角がすてき。
表紙、扉、裏表紙の3枚でしゃれたショートストーリーになってます。
中には、佐藤さとるさんをはじめ児童文学のそうそうたる顔ぶれの作家さんたちが連載や短編を寄せていて、読み応えたっぷりです。「鬼の創作道場」という作品投稿の場もあります。

この雑誌には、毎号シンプルな「お題目」が出ます。これに縛られることなく自由なテーマで創作してもよいのですが、わたしは「お題目」にあわせて描きました。
今号は、「てん」。
「てん」と聞いて、なにを思い浮かべますか?
天空? 天丼? 展覧会?・・・・・・・・・はたまた、動物のテン?

10ページの短編マンガはこんな感じです。


お手に取ってご覧いただけたら幸いです。
「鬼ヶ島通信」のHPはこちらです。→ http://onigashima-press.com/

マンガという形でちゃんと印刷物として発表したのははじめての経験だったので、まだまだぎごちないです。でも、マンガは描いてみるといろいろ気が付くこともあり、おもしろかったので、次号にもまた寄稿させていただくことにしました。
このマンガへのご意見や感想をいただけたらうれしいです。

この雑誌の編集者Kさんが、雑誌といっしょに、やはりご自分が編集された本を一冊同封してくれました。


野上暁編の8人の児童文学者が語る現代史、です。
まだ全部を読み終えていないのですが、語られる思い出の中に、戦中、戦後の児童文学、雑誌、映画がたくさん出てきます。
この本の中で、わたしがいちばん最初に読んだのは、岩瀬成子さんの思い出でした。その理由は、岩瀬さんが戦後生まれだったからです。わたしは今、戦後70年の間に、ほんとうのところ何があったのか、・・・・・・とても知りたいのです。

岩瀬さんは敗戦から5年後、山口県でお生まれになりました。わたしより10年ほど年上なので語られるお話の内容は、わたしの体験とは違います。しかし、そこに出てくる文化や雰囲気は、小さかったころのわたしが、なんだかよくわからないけれど、自分のすぐ横に確かにあったと記憶しているものと同一でした。
「ほびっと」という名前の反戦喫茶は、わたしの母の口から何度も聞いていた「ほびっと村」と何か関係があるのでしょうか。当時のわたしには、その名前がトールキンの『ホビットの冒険』からきているなんて知る由もなく、ただその耳にきこえる「ほびっと」という言葉に、なにか特別のものを感じていました。
母親がとつぜん、アルコールランプを使うコーヒーのサイフォンを買ってきて、コーヒー牛乳やネスカフェとは一線を画して飲んでいたこと。わたしは、コーヒーは飲めなかったけれど、ぶくぶく泡立ちながら上の層へとのぼっていく水を見ながら、空気はあたためると膨らむことを学んだのです。
掲載写真にあった「ほびっと」のマッチの絵が、長新太さんであることは、おどろきでした。

わたしがまだ幼かった’60年代、隣町の立川には、立川米軍基地がありました(1977年、基地跡地は日本に全面返還。)当時は、まだ、白い着物をきて帽子をかぶった傷痍軍人さんが、デパートのわきの道にすわって物乞いをしてる姿に出会いました。子ども心にとても怖く、横目でちらちら見ながら前を通りすぎました。家には「のらくろ」のマンガ雑誌があり、何度もページをめくりましたが、初期のころののらくろが二等兵で失敗ばかりしていたものは読めても、階級があがり偉くなってからの部分は、我が家にはありませんでした。包み紙にアトムやウランちゃんのついた明治チョコレートの広告が裏表紙の「鉄腕アトム」の雑誌もありました。
そんなわたしの世代には、政治とかデモとか「反対」とかにアレルギーを感じ、無関心な人が多いです。こわいくらいに。

もう一冊、おすすめの本を紹介します。


サラエボでの戦時下に子ども時代をすごした人たちが、当時の一番強く残っている思い出を、SNSの短文に書き表したものが、集められています。
この本の中には、戦争のリアルが詰まっています。SNSに凝縮された「戦争の実態」は見かけは小粒ですが、とても重く、いちどにたくさん飲み込むことはできません。

最近は、「戦争」「平和」という言葉が、ねじまげられ、ゆがんだ姿で目の前に突き出されている気がして、わたしは呆然とします。




© Nana Furiya